神はアブラハムをためされた。
「アブラハムよ。」
「はい。」
「あなたの息子、あなたの愛するひとり子イサクを連れて、モリヤの地に行きなさい。私が命じる山の一つに登り、彼を焼き尽くす捧げ物として捧げなさい。」
次の朝早く、アブラハムはロバに鞍を置き、捧げ物に用いる薪を割り、二人の若者と息子イサクを連れ、神の命じられたところに向かって行った。
三日目になって、アブラハムが目を凝らすと、遠くにその場所が見えたので、
アブラハムは若者に言った。
「お前たちは、ロバと一緒にここで待っていなさい。私と息子はあそこへ行って、礼拝をして、また戻ってくる。」
アブラハムは、焼き尽くす捧げ物に用いる薪をとって、息子イサクに背負わせ、自分は火と刃物を手に持った。二人は一緒に歩いて行った。
「私のお父さん。」
「ここにいる。私の子よ。」
「火と薪はここにありますが、焼き尽くす捧げ物にする子羊は どこにいるのですか。」
「私の子よ、焼き尽くす捧げ物の子羊は きっと神が備えてくださる。」
二人は一緒に歩いて行った。
神が命じられた場所に着くと、アブラハムはそこに祭壇を築き、
薪をならべ、
息子イサクを縛って 祭壇の薪の上にのせた。
そしてアブラハムは、手を伸ばして刃物をとり、息子を屠ろうとした。
その時、天から主のみつかいが呼びかけた。
「アブラハム、アブラハム。」
「はい。」
「その子に手をくだすな。何もしてはならない。あなたが神を畏れるものであることが、今、分かったからだ。あなたは、自分のひとり子である息子すら、私に捧げることを惜しまなかった。」
アブラハムは目を凝らして見まわした。
すると、後ろの木の茂みに 1匹の牡羊が角を取られていた。
アブラハムは行って その牡羊を捕まえ、
息子の代わりに焼き尽くす捧げ物として捧げた。
アブラハムはその場所をヤーウェ・イルエ (主は備えて下さる。)と名付けた。そこで、人々は今日でも「主の山に、そなえあり (イエラエ)と言っている。